小説を書くということ
恐らくはそこに規則というものはないのだ。
「物語」ではなく「小説」なのだとしたら、「視点」の問題とか、プロットの問題とか、簡単に超越してしまうような「自由」があるはずだ。
『谷間のゆり』も小説ならば、『モンテ・クリスト伯』も小説だし、『ペンギン村に日は落ちて』も小説なのだ。『重力の虹』も小説だし『こころ』も『ロング・グッドバイ』も小説だ。
その圧倒的な自由の前に困惑する。困惑したまま、もう四十年が経った。
なるほど、なんでもそうか、真似ることからだ。自分の好きな小説をひとつ決めて、その真似をするということでどうだろうか。
不定形であやふやな「原・小説」に枠組みを与える。枠組みの中で、俺の「原・小説」が息づき始めたらしめたものだ。その尻尾を掴んで引きずり出せばいい。