俺の実家はいまだにダイヤル式の黒電話だ。
これまでもう何度も見ているはずなのに、俺の長男、すなわち実家の母からすれば孫が初めてその黒電話に興味を示した。
「これ、どうやってかけるの?」
「マジか!?」
指を入れて、ここまで回すんだ。んで、離す。もとに戻ったら次の番号。
♪ダイヤル回して手を止めた〜♫
(小林明子『恋に落ちて』)
8とか9とかが戻っていくまでの、あの刹那の葛藤、取り留めのなさ、歯がゆさと開き直りを君たちは知らないのだな。
駄目だ駄目だ。
お若ぇの、草食系とか言われて、君たちがぼやぼやしている間に、その機微を知る俺たちが、まるっと頂いちまうぜ。