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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

父の本棚

 

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

 

 

その頃には意味の分からなかったことが、後になってすうっと筋道が通る。大抵の場合、悲しいかな、その時にはあらゆる側面から後の祭りである。ではあるが、その筋の通り具合に「なるほどね」とひとりごちる。

 

先日、七回忌を済ませた父の本棚には、例えば宇野浩二全集があった。それが月ごとにだかに届けられてくるのを覚えている。「結局、読まなかったな」という父の呟きも覚えている。その全集を父の死後、貰い受けて俺の家に置いてある。実はまだ読んでいない。二代に渡ってツンドクではいけない。いつか読もう。

 

『ブラリひょうたん』高田保があった『クラクラ日記』坂口三千代なんてのもあった。あったことは良く記憶している。その背表紙は覚えている。覚えているけれど手にとったことはない。俺が手にしたのは、宇能鴻一郎川上宗薫が載っている『オール読物』とかだった。

 

父の本棚というのは、そういうものかもしれない。

 

そんな中に岩波文庫版の『モンテ・クリスト伯』があった。ある時、テレビで呉智英が勧めていた。「岩波文庫版の最終巻には、大判のゴチックで『待て、しかして希望せよ』って書いてあるんだ」と言っていたのだ。

 

それを聞いて、ようやく手にとった。文字通り手にとっただけだ。読みはしなかった。そしてその最終巻の最後を開き、確かにその言葉を認めた。そう言えば、父親はまだ小さかった俺に「その時、エドモンド・ダンテスがな…」と聞かせてくれた。俺は何も覚えていないが。

 

先週から読み始めて、今、二巻の終わりだ。先に三巻を手に入れておかなかったことを後悔している。

 

色々な意味で「なるほどね」なのだ。呉智英が勧めた意味も、父親の本棚にあった意味も。父親という人間の有り様も。