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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

珈琲不演唱歌

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生まれて初めて喫茶店にひとりで入ったのは、何歳の頃だったろう。高校時代はインベーダーゲームが全盛期だった。100円玉を握りしめて、安い喫茶店に入った。

 

『ワールド』というカラオケスナックがあって、その2階の喫茶店だった。夢中になって、砂糖壺をひっくり返したヤツが居たっけ。珈琲を頼んだけど、味なんて分かりはしなかった。

 

御茶ノ水に『ニューポート』というジャズ喫茶があった。狭い路地を入って、友だちの家に上がり込むような階段を昇る。大きなスピーカーの前で珈琲を舐めた。やはり味なんて分かりはしない。

 

ああ、美味しいなぁと感じながら珈琲を飲んだのは、相当後のことだ。それも、素人の友達同士が集まって、見よう見まねで2泊3日の登山をした時のことだ。

 

メインとする山の外輪山を登り切った辺りから雨が降り始め、レインウェアーに着替えた。背中のリュックは否応なく重く、咥えた煙草は下手をすると雨の雫に濡れて消えてしまった。

 

そんな状態で地味に歩を進めていると、誰かが「珈琲を飲もう」と言い出した。簡単にフライシートを掛けて雨を凌ぎ、湯を沸かした。一人用のドリップ式のものをアルミのマグカップに乗せ、珈琲を淹れた。それぞれがマグカップをそれぞれの手に持ち、大木の幹に寄りかかり雨を避けながら、啜るように飲んだ。

 

夏のことなのに、暖を取るためにも役立った珈琲だった。

 

そう言えば、修学旅行で行った京都で、三条のイノダコーヒ店に行った。学生服を着た俺たちは、ドヤドヤと押しかけて、一体どういうつもりだったのだろう。その頃は、まだ高田渡なんて聞いたこともなかったのに。

 

イタリヤで飲んだエスプレッソは、脳髄が痺れるほど美味しかったっていう話を書こうと思っていた。ところが、飲んでいないはずはないのに、何の記憶もない。その代わりに雨水で薄められたアルミのマグカップの珈琲の話ってのが、俺らしいのか。