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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

ロタからのインフル

雑感

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半世紀を越えなんとして、インフルエンザに罹患したことがないというささやかな誇りがあった。そして、そんなに辛いというのなら、一度経験したいものだと嘯いていた。

 

学生時代、木材工場でバイトしていたことがある。正確には合成木材で、軽量のそれを加工して棺桶の蓋なしのようなものを幾つも作り、浄水施設などの蓋にするのだ。作業工程ごとにペアになって、裁断班・接着班・釘打ち班・塗装班などを為す。どの工程も50分をワンセットにして、10分の休憩を取る。寒い頃だったので、ストーブの周りに集まって一服する。

 

前の晩、おねえちゃんのいるスナックで『ネグレスコホテル』とか歌って騒いでいた後の6時起きで、二日酔いどころじゃない、まんま飲み過ぎの状態でツナギに着替えた俺は、その10分休みごとにトイレでモドした。追い打ちをかけるように、昼食の仕出し弁当は鯖の味噌煮で、悪意を持った太い骨が俺の舌の裏を刺激した。

 

あの日より、あの状態よりも辛いというのが想像できないから、一度そのインフルエンザとやらに罹ってみたいもんだと。

 

まずは、先週末の下痢からだ。御存知の通り酒飲みは基本的に腹を下しているから、対して驚かない。しかし、ただの下痢と種類が違うと感じたのは、立っていられないからだ。ちょうど仕事も緩急の緩の時期に入っていたので、願い出て早退をした。生まれて初めて、駅から家までの15分の道のりにタクシーを使った。医者に行き、薬をもらい寝っぱなしに寝た。

 

ロタウイルスによる下痢だった。

 

そして、また金曜日だ。朝から花粉が多いとニュースで言っていたので、マスクをして出かけた。鼻水が止まらなかったし、朝起きる時に、嫌なGが全身にかかったからだ。

職場でその姿に「風邪ですか?予防?」と尋ねられるたびに、「いや、花粉花粉」と答えながらも、ダルさが度を増す。念の為に熱を計ると7度を越えていた。「微熱少年だね」と呟くと「微熱オヤジでしょ」とちゃんとツッコミを入れてくれる優しい同僚に、悪いけど帰るねって、2週続けての早退をした。

 

でも、早退は大げさだなと思っていた。でもまあ良いか、「緩」の時期だしと、タクシーにも乗らずにトボトボと帰った。

 

情けないことに持ち合わせの金がなくて、医者に行けなかった。妻はバイトの遅番で、夕刻を過ぎないと帰らない。家に着いて計り直してみると、熱は8度を越えていた。部活から帰った息子に、「熱がある時はこのスタミナスペシャルを飲むんだ」と生姜とニンニクとネギを刻んで酒で煮て醤油を垂らした父譲りのドリンクの製法を教えながら飲み、布団に入った。

 

何枚布団を重ねても、スキー用の厚手の靴下を履いても、悪寒が止まらなかった。

 

翌朝、医者に行ったら、真っ赤な陽性反応でA型インフルエンザだった。種類が違うのか、全然辛くなかった。これでもう一日二日休めるならお安いご用だ。あの木材工場の一日には遥かに及ばない。ロタの方がキツかった。

 

年末にインフルにやられた妹から「死ぬほど辛かった」と言われた。だから多分「種類」の問題なのだろう。だからって、今更本物を経験したいというようなマゾヒスティックな性向はない。

 

この僥倖を寿ぎながら、枕元のiPodから、スネークマンショー文楽圓生をヘビロテで流し続けている。