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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

おでんの匂い

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仕事帰り、信号待ちをしている時に、辺りから夕餉の香りが漂ってきた。そして「夕餉の香り」なんて言う漠然としたものじゃない、これはおでんの匂いだと気付いた。

 

俺の母親の実家は、夏はかき氷を売り、冬はおでんを売った。そんな話を幼い頃から聞かされていた。「全然、儲からないよ。近所の子供の小遣い目当ての店だもの」そんなことを言っていた。

 

小さい頃からおでんの話を聞かされて育ったのと、自分自身が小柄だったのとで、俺の好きなキャラクターは『おそ松くん』の「チビ太」だった。今でも何も見ないで描くことが出来る。

 

そのおでん屋の借地権を父親が買い取り、その家で父親は指輪を作り、俺たち兄妹は育った。そんな出自だからということもあって、母親は気合を入れておでんを作った。俺たちが「風呂釜」と呼んでいた大きな鍋にいっぱいのおでんを煮た。俺が友だちを夕飯に呼んだりする時にも、おでんだった。

 

夕飯におでんを食べ、夜食におでんを食べ、翌日の朝もおでんを食べた。試験勉強をしている兄妹が、夜中にこっそり台所にやってきては、少しずつ少しずつ食べた。

 

そんなことを思い出す。俺にとっておでんは、家族が家族として同じ家に暮らしていた頃の記憶と結びついている。

 

だからだろうか、正月に里帰りすると、母親はおでんを作って待っている。一人暮らしの母親は、おせち料理を作るのでも、お雑煮を作るのでもなく、おでんを煮て俺たちを、孫を迎えてくれる。