読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

蝶の指

f:id:jerryrollsunny:20121208151701j:plain

 

つい最近ご招待頂いた場所でまたも目の前で上質の演奏に触れる機会に恵まれた。今回はピアノとサックスのデュオ…というのかアンサンブルというのか。

 

「折角のこのような機会ですから、難曲に挑戦してみます」ということで鍵盤を上から下まで駆け上り駆け下りるようなアクロバティックな指使いと、風の強い日で、裏の竹林が揺れるざわめきの中に溢れ出る音の奔流に翻弄されていた。その手は、蝶がはばたくように鍵盤の上で踊ったのだ。

 

なんて自由に指が動くのだろうとポカンとしているうちに、その自由さを支援する定型的なルーティーンを思った。どれだけのエクササイズが繰り返され、その隙間に僥倖のように訪れる天啓とを縫い合わせてこの自由さがあるのだろうと。

 

俺は本当にささやかにギターを爪弾くという形で楽器と触れ合っているだけだが、その俺でも、あの軽やかさが、強靭さに支えられていることを知っている。物凄い力を入れて、軽く弾くのだ。

 

音楽家は、そんな天の仕事をする人たちだ。俺の暮らす位相とは違うところに暮らしている。俺はただひたすら顔を上気させて、その恩恵に浴する。宮沢賢治『虔十公園林』の虔十のように「ハアハア」と息をはずませて、だ。