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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

夏が終わる前に

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俺は酒を飲むと酔う。酔う前に「いや、これ以上飲むと酔いますから」と杯を押さえるということが出来ない。結果、へべれけとか時にぐでんぐでんとかいったことになる。

 

最終電車を乗り過ごすということもある。また、判断を間違えて、変な乗り換えをしてしまうこともある。

 

本来なら近郊の私鉄に乗って自宅直近の駅に戻らなければならないのに、何故かJRの終電を選んでしまい、山ひとつ向こう側まで行ってしまったことがある。

 

その駅は海に向かった駅で、すぐ背後に山が迫ってきている。どう考えても3時間の徒歩コースであることは覚悟したのだが、俺が悄然としたのはその行程だった。思いつくルートは2つ。ひとつは往復4車線のかなり広い道路に出て、国道を目指すルート。街灯も整備されているし、要所に交番もあるので安心なコースだ。但し、国道に出るまでに相当の迂回をしなければならない。3時間コースが倍の6時間コースになってしまうかもしれない。帰ったらすぐ仕事に向かわなければならない。

 

もうひとつのコース、これを選ばざるを得ないと直感的したのが悄然の理由なのだが、タクシーを頼んだらそのルートを選ぶだろうという最短コースだ。しかし、途中に山越えがある。片側1車線のひっそりとした上り坂の辺りには解体工場がぽつんとあり、鬱蒼とした木々が、乗り捨てられた廃車の上に覆いかぶさっていたりする。登り切った所にトンネルがあり、そこを出ると霊園がある。えいやっとこのコースを取れば、3時間くらいでも眠ることが出来る。

 

あの道を歩くの嫌だなぁと思いながらもトボトボと進んだ。ちょっと真っ直ぐ歩けないくらいには酔っていた。かと言って道を間違えるほどは酔っていなかった。

 

いよいよその登りに差し掛かる。山の上の方から坊主頭でジャージ姿の集団5,6人が下りてきた。中学生だろうか深夜1時過ぎにどういうことなのだろう。中の何人かはタバコを吸っている。関わりあっても嫌なので目を合わせないように擦れ違った。

 

擦れ違った瞬間、ザッと雨が降ってきた。俺は身をすくめて雨のしずくを受ける。しかし、その雨はザッという一瞬だけで止んでしまったようだ。俺は両腕をかざしてみた。確かに濡れている。しかし、道路は全く濡れていない。しかもこんな一瞬の雨なんてあるんだろうか。

 

おかしなこともあるものだ。奴らもびっくりしてるんじゃないかと、すぐに今、擦れ違った中学生の方を振り返った。

 

誰もいない。

 

道の片側は解体工場、反対側は中学校の校庭になっていて、曲がり角など姿を隠すようなものは全くない。

 

俺はぞっとした。ぞっとした次の瞬間にはトンネルに差し掛かっていた。俺は頭を下げ爪先だけを見ながら、頼りないトンネルの灯りを頼りに進んだ。顔を上げると何かとんでもないものが見えてしまうような気がした。

 

翌朝、妻にその話をした。妻は知り合いの霊感の強い女性にその話をした。彼女は「あたしは、昼でもあの道は通らないわ。クルマでだって、ひと区間だけだけど、高速を使って山を越える。あの道は通れないわよ」と言った。

 

それはいつも俺たちの傍らに居る。俺の内面にということであるのかも知れないけれど、居る。居て何かを伝えてくれる。「飲み過ぎんなよ」ということなのかも知れない。