ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

ギャッと叫んで走り回る

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高校には球技大会というものがあった。サッカーをしたり、バレーボールをしたり、クラスの女の子たちがタッパーにレモンとハチミツを入れて差し入れしてくれたりするのだ。

 

言うまでもないが、俺は球技大会というものが持つ輝きから最も遠い所に居る。間違いない。球技大会がロミオなら俺はジュリエッタ、激しく愛しあいながらも結ばれない。

 

放課後にはグラウンドに、休日には河川敷に集まったりして練習をした。遠い目をした夢見がちな少年を誰にも責められはしないだろう。俺はディフェンダーとしてゴール前、スライディングをして敵のボールを弾く練習をした。元サッカー部の同級生がコーチだった。彼はやがて俺の好きだった女の子と付き合うことになる。

 

繰り返す。彼が俺に教えてくれたのは、スライディングをして敵のボールを弾くやり方だ。進行方向に身体を合わせていき、タイミングを見てボールを外へ蹴りだす。ルールは教えてくれなかった。俺はとにかくゴール前に走ってくる敵の選手に身体を合わせていった。

 

その選手がボールに絡んでいるかどうかは関係ない。とにかくゴール近くで走っている選手に身体を合わせていった。とにかく走っているヤツの走りを妨げれば良い。そんなつもりだった。

 

要するに俺は、バタバタとグラウンドを無意味に走り回り、敵チームの妨害をしていただけだった。

 

今にして思えば。

 

そう思うと己の、なんというか無自覚にギャッと叫んで、この辺りを走り回りたくなる。

 

俺は次第次第に敵チームの怒りを買い、やがて蹴り倒された。「ふざけんな」そう吐き捨てられて、倒れた所を蹴られた。痛い。心が痛い。俺はサッカーのルールについて、手を使ってはいけないこと、ボールをゴールにたくさん蹴りこんだチームが勝ちだということ、その程度のことしか知らなかった。

 

サッカーを見るたびにうすーく、その日のことを思い出す。高校3年生の夏、試験休みの1日の球技大会のことだ。

 

恐れているのは、今も同じような勘違いをして、場を荒らしているんじゃないかということ。

 

ま、いいか。俺はもう高校生じゃないからそう思う。誰もがスポーツを好きで、誰もがある程度のルールを知っているはずだっていう共有感覚そのものに、尻喰らえ観音的な気持ちを持つ。そんな形で自分の感受性を涵養してきたのだ。