ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

でも、なんとかなる

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ロンドンオリンピックを見ていて思い出したことがある。

 

昔、イギリスへ仕事で行った時の話だ。一緒に行った同僚との確認が上手くいかなくてロクでもないことになった。

 

今でこそ郵便局などでも両替が出来る時代になったけれど、当時はごく限られた銀行でしか円をポンドに替えることができなかった。

 

俺は海外旅行はまだ二回目で、しかも前の一回は個人旅行だったから、仕事で国際線に乗るのは初めてのことだった。だから、けっこう一杯一杯になっていたのだと思う。

 

一緒に行く同僚に「2週間っていう長期の出張だから、支度金が出ますよ」と言われていた。出張先の昼食代として使ってくださいっていう名目で、社長から500ポンド(当時のレートで1万円くらいだったと思う)を渡されるというのだ。

 

揃った条件は3つ。

 

1. 初めての海外出張の為の準備でてんてこ舞いになっていた。

2. 小遣いを500ポンド渡されることになっている。

3. 前日に仲間がパーティをしてくれて、二日酔い。

 

ずっと気にはなっていたのだが、俺から「あの支度金とやらって、いつもらえるのかな」なんて聞くわけにもいかない。

 

だから黙っていた。チェックインを済ませ、ゲートに入り、出国審査を通過し、機内に落ち着き、「俺だったら渡す金は最初に渡すぞ」とか思っていた。職人だった父がある時「借りた金なんかは、アサイチで返すんだぞ。逆の立場で考えてみろ」と言っていた。その意味が分かるような気がしたのだ。

 

既にして機内食を食べるような頃合いに、同僚が「そう言えば…去年までは支度金が出たのにね」と言った。財政状態逼迫に伴って、各所から批判が多かったあの金は廃止されたのだと。

 

俺のポケットには昨日のパーティで使った残りの金、2000円があるだけだった。

 

そういう大事なことは、最初から言ってくれないと…という甘えた言葉が脳裏をよぎる。

 

俺とその同僚とは同じイギリスでも、行き先は別だった。その日の夜から彼はオックスフォードの駅近くへ、俺は更にその北にあるバンベリーという町へ行かなければいけない。ATMを使えるようになるとしても、翌日までは実質的な文無しだ。

 

我が人生初の海外出張は、俺より10歳近く年下の同僚に「ごめん、ポンド貸してくれない?」と頼むという形で、極めて幸先の良いスタートを切ったのだった。

 

一人旅ではないので、決して決定的な危機ではなかったけれど、ちょっと余りにも「大人未満」な自分の姿に呆れながら笑ってしまった。

 

ヒースロー空港に、ポケットに2000円しかなくて降り立った時、俺はいつか誰かにこのことを話そうと思った。それが今だ。