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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

ぼくのおしゃれ

小説みたいなもの

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 ぼくね、いろんなことが、だめ、なの。体育の授業でバレーボルやっても、だめ、だし、技術家庭の授業でちりとり作ってもだめ、なの。何回怒られてもルール覚えないし、アルミ板をどうやってもまっすぐ折れない。中3にもなって、実は分数の割り算がよく分かってないし、何度説明されても、国語は正解にたどり着けない。

 

でもね、ぼくが本当にだめなのは、そんなことじゃないんだ。ぼくはそれを知ってる。もっと、なんて言うのかな、ぼくの中心みたいなところが、だめ、で、バレーボールができなかったり、ちりとりが作れなかったりするのは、その、だめ、な中心のせいなんだ。ぼくは、ぼくの他に、ぼくはいないのに、一番仲良くしなくちゃならないぼくが、ぼくを嫌ってる。それが、ぼくの中心(かな?)なんで、ぼくはぼくが嫌いなのかな。いつからぼくはぼくを嫌いになったのかな。忘れちゃった。

 

小さい頃、神様がいた。神様は、ぼくが想像する神様は、なんでだろう、雲みたいだった。夜寝る前、ぼくは、明日は失敗をしませんか?って神様に聞いた。その時思い浮かべる神様は、チョコ・ロールみたいな雲に、あんずみたいな目がふたつ付いているってものだった。明日は叱られませんか?失敗をしませんか?って尋ねても、僕の神様はそんなものだったから、何も言わないでふわふわしてるだけだった。

 

ぼくはもう子供じゃないから、そんなふうに神様に聞いたりはしない。それに、あの神様は、どうしたって頼りない。ただふわふわしてるだけの神様なんて、意味ないじゃないか。

 

ぼくは、いろんなことを、誰にも話せずに困ってる。あんな神様でも「ねえ、神様」ってつぶやくだけで、自然に思い浮かべられて、話しかけられた。何も答えてくれない、あんんなの神様じゃないよなって思っちゃうけど、本当は、あんな神様でも、居ただけましだったのかな、なんて思う。

 

ぼくは、ヘンに思われるだろうけど、女の子みたいなんだ。

 

あの日は、塾をサボって、公園に居たんだ。牛乳を飲んでた。何だか大人みたいな気分で。夜の公園は誰もいなくって、夏の夜だったから涼しくって。誰もぼくを見ていないから、ぼくは、ぼくの嫌いなぼくと、少しだけ仲良くなれる気がした。

 

あの人は、部屋の窓からぼくを見てたんだって。ぼくはそんなの全然気付かなくって、だから、あの人がぼくの座ってるベンチの後ろの植え込みからバサバサって出てきた時は、とてもびっくりした。

 

「あのさあ」って言ったんだ。「部屋の模様替えをしてるんだけど、さすがに机はひとりじゃ動かせなくてさ」って「手伝ってくれないか」って言ったんだ。ぼくは「でも、ぼくに持てるかな」なんて言って、あの人は「ひとりよりふたりさ」なんて言ったんだ。とっても小さい声で。

 

あの人の部屋はとっても狭くって、何だかわけの分からない本とかCDとかがいっぱいあって、こんなごちゃごちゃな部屋を模様替えしたってしょうがないじゃないかって思った。

 

だから、そう言った。そしたらあの人は「それもそうだね」って言って笑った。そして「絶対誰にも言わないって約束してくれるなら、気持ちいいことしてあげる」って言った。

 

ぼくはその気持いいことが、いったい何のことなのかすぐ分かった。キスしたりすることなんだろう。きっと裸になったりするんだ。それは、ぼくは男なんだから、ふつう女の人とすることなんだ。だから「ぼく、男だよ」って言った。そしたらあの人は「知ってるよ」って「でも、とってもかわいいよ」って言った。

 

ぼくは、とてもドキドキしてきた。走って逃げようかとも思った。でもそのままそこにも居たかった。「とちゅうで、やめてって言ったら、絶対やめてくれる?」って聞くと、あの人がとても真面目な顔でうなづいたから、だからぼくもうなずいちゃったんだ。

 

エッチなことをされている時の自分の顔を見られるのはとても恥ずかしかったから、電気をけしてもらった。「やめて、やめて」って言いながら、でも結局ズボンを脱がされるままになってた。

 

次の日も、その次の日も、ぼくは窓の下から、あの人の部屋を見上げていた。

 

でもあの人の部屋の窓が開くことはなかったんだ。

 

ぼくは少しだけほっとして、でも飼っていたハムスターが死んでしまった時のように悲しかった。

 

ぼくは思ったんだ。あの人は、多分とてもずるくて、ぼくもとてもずるかったんだ。あんなふうに抱き合って、あんなふうに舐め合ったけど、ぼくもあの人も、絶対、また会おうねとか、またこうしたいねとか言わなかったもん。

 

あの人は、多分もうぼくのことなんか忘れてる。それはどうか分からないけど、忘れようとしてるのは絶対だ。

 

だめ、な、ぼくは、またひとつ、もっともっとだめ、になったような気がして、大人がお酒を飲むのは、きっとこんな気分の時なんだろうなって思った。

 

 

ぼくはおしゃれになる。

 

 

あと半年で(うまくいけば)ぼくは高校生になる。そしたらぼくは、おしゃれになって、かわいくなって学校へ行く。バレーボールが出来なくてバカにされるのも、女みたいってバカにされるのも同じだもん。ぼくは、だめ、だけど、かわいいもん。そう思ったら、もしかしたら、だめ、なのは、ぼくじゃなくて、ぼく以外の全部なのかもしれないって思ったんだ。

 

あの人だって、だめ、だったじゃない。ぼくをほしがったくせに、そんな自分が怖くなって隠れてたんだ。きっと、ぼくがまたひとつだめ、になったんじゃなくて、あの人のだめ、が、ぼくに伝染ったんだ。

 

ぼく、どんどんおしゃれになろう。それで、いつかあの人に会ったら言ってやるんだ。おかまやろう!ダッセエ!って。

 

 

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失われたと思っていた雑誌が発見された。

 

http://jerryrollsunny.hatenablog.com/entry/2012/07/08/064409

 

恥を覚悟で、でも正直そこで書いたものには愛着もあるのでここに再録した。「ぼくのおしゃれ」という題名の小説(のようなもの)だ。