読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

2番目に嬉しいこと

雑感 イギリス

f:id:jerryrollsunny:20060720191713j:plain

 

俺の自身の体験にことよせて、年若い友人が教えてくれた言葉を紹介しよう。今日のブログの最後のひと言は、彼が俺に言ったものを借用した。

 

まずは俺自身の体験から。

 

イギリスで学生たちの様子を見ていた時の話だ。基本的に俺は部外者だった。

 

学生たちは色々な国の連中と英語の授業を受けたり、サッカー・テニス・バスケットボールなどのアクティビティを共にしたりしながら仲良くなり、意思疎通の共通言語である『英語』を勉強するモティベーションを上げる。そういう次第になっている。

 

俺はそれを少し距離を置いたところから眺めながら、学生たちが何か致命的なことにならないようにケアしていた。ものすごく格好つけて言うと、J・D・サリンジャーが言うところのライ麦畑の捕まえ手として「ほらほらそっちは危ないよ」なんて声を掛けるわけだ。

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

 

フリーな時間にもう何日も部屋から出てこないような女子とか、ひとりでPSPをやっているだけの男子とか、そんな連中に「どう?」なんて声を掛けながら、彼らのちょっとした船出を手助けしてやる。

 

基本的にはその語学学校のスタッフがやることなのだけれど、彼らがどんなに働きかけても、日本人の学生は「イエス」も「ノー」もなく、無反応で地蔵のように立ちすくんでしまったりするから、スタッフとしても途方に暮れてしまうわけだ。俺は浮き輪のような形でその媒介をする。

 

だから、時が経って、曲がりなりにもどの学生たちも生活のリズムを取り始めてしまえば、俺としては特にやることもなくなる。

 

キャンパスをウロウロとして異国の景色を眺めたり、学生たちの写真を撮ってやったりするくらいだ。

 

俺は単純に色々な国の学生たちの様子を見るのが楽しみだった。俺のことを「ジャパニーズ・エージェント」と呼んで、話しかけてくるヤツも居た。イタリア人たちは集まって大騒ぎをする。ドイツ人たちは何だか親日家が多くて(多分勤勉なメンタリティが肌に合うんだろう)、知っている日本語の単語を羅列して近づいて来たりする。北欧の連中はひとまとめにマジメだし、ブラジル人の女の子は可愛い。

 

よく知られているように、イギリスの夏は曇天が基本なのだけれど、俺がいた年は記録的な猛暑だった。そして日本と同じように突然の驟雨に見舞われることがあった。そんな時、俺は「エージェント」らしく用意周到にバックから折りたたみ傘を取り出したものだ。

 

その日も、バケツをひっくり返したような雨が降り、あまりのことにみんなそれぞれ近くの校舎の軒下に雨宿りをしていた。その中、俺は例によって悠然と傘を差し、キャンティーンのある蜂蜜色した煉瓦作りの建物に向かって歩いていた。何人かの顔見知りの学生たちと目が合うと、俺は得意そうに微笑んだ。

 

その時、背後から「アンブレーラー!」と叫びながら、篠突く雨の中、俺の傘に駆け込んで来た女の子が居た。食堂に行くの?と聞くとそうだと言う。食堂まで傘に入れて、早く行かないと、すごく列が長くなるじゃない。癖のある英語でそう言った。それがブラジル人の女の子だ。

 

ローライズのジーンズに丈の短いTシャツを着たブラジル人の18歳の女の子と、相合い傘でイギリスの芝生を抜ける小道を歩いた。あの数分間、あれが俺の人生で2番目に嬉しかったことだ。

 

1番?

最高に嬉しいことは、これからやって来るんだ。