ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

シルバー留学

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ビートルズイエローサブマリンに「オール・トゥゲザー・ナウ」という曲がある。その曲を初めて聞いたのは、中学生。同名の映画を見た時だ。すぐにレコードを手に入れて、歌詞版を見ながら聞いてみた。「All」…習ったことある。「together」…難しい単語だ。でも「th」は発音に注意しなければならないってことは習った。「now」…この単語も知っている。うん。いいぞ、ほぼ70%は知っている単語だ。

 

ところが、アコースティックギターの響きから始まって、ポールの軽い調子の歌声をいくら待っていても、リフレインの「All Together Now」という所に行き当たらない。

 

聞こえてくるのは「オンピゲーベナ」という繰り返しだけだ。訳が分からなかった。何故、書いてある文字は「オール・トゥゲザー・ナウ」なのに聞こえて来る音が「オンピゲーベナ」なのか。これは修辞ではない。本当にこの通りに聞こえた。それでも曲は好きだったから、毎日毎日聴き続けた。

 

やがてその瞬間が訪れた。そんな瞬間のことを「耳が開く」と言うらしいが、間違いなくこの曲に関して「耳が開」いた瞬間だ。

 

「All together now」と言っているのが「感じ」られた。Allの最後の無声音「l」とtogetherの最初の「t」が一緒になって、「オートギャ」と聞こえるのだった。それを俺の耳は「オンピ」と解釈したのだった。

 

大学時代、中国語が話せる先輩に「どうやって練習したんですか?」と尋ねると、「僕の場合、テープを聞きまくりました」と言っていた。そういうことなんだろう。

 

そこからは、水流に崩れた砂山がどんどん流れて行くように、どんどん聞こえて来る部分が増えていった。

 

俺にとって、英語圏で生活するということは、足の立たない海や湖を泳ぐという行為に似ている。泳ぎ方は知っているのだから、深さがどれくらいだろうと関係ないはずだ。しかし、その深さに、そして岸からの距離に怯えてしまう。辞書をレスキューチューブにして、エイヤッと飛び込むと、例えば2週間、「あれ?英語だけで過ごしていたね」ってことに気付く。それが嬉しい。

 

俺はせいぜい長くて3週間、そうやって暮らしたことがあるだけだ。もっともっと。浮き輪なしでもっともっと足の立たない深いところを泳ぎ、その距離を増やしていきたい。

 

テレビでハワイの映像を見ていた。突き抜けたような空間の広がりと、空気の感じに感動して、息子たちに俺は「定年退職したらハワイの大学に留学したいんだけど、学費よろしくね」と言った。すると間髪を入れず「お断りします」「自分のことは自分でしてください」と口々に言われた。

 

ふん、こうなったら、過去、人類が伝統的に行なってきた方法を取るまでだ。

 

「稼ぐ」

 

それしかない。

 

 

写真はハワイ島ではなく、サイパン島の夕日。