ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

眠らせておくれよ

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中学校の頃、とても元気な勉強の良く出来る優等生の女子がいた。仮に凖ちゃんとしよう。そういう子は大抵テニスをやっているものだが、ご多分に漏れず凖ちゃんもソフトテニス部だった。

 

話はソフトテニスのことではなく、彼女が書いた卒業文集でのひと言だった。マジメで何をやるにも一生懸命、眉間に塩ひとつまみほどの微かな憂いがあって、その反動のように顎の辺りに強い意志の力を見せていた凖ちゃんだ。彼女が中学を卒業するにあたって書いた詩は「また階段をひとつ登ったよ」という書き出しだった。

 

正確には全然覚えていないのだけれど、これは自分の本意ではなく、時に後押しされるように気付いたら登らされていた階段なのだと。登った以上その場所に馴致するしかないのだけれど、本格的にその時が始まるまでは、ライオンの午睡の夢を見せておくれよ。そんな感じの言葉が、つらつらと書かれていた。

 

俺は正直驚いたのだ。あんなカギカッコ付きの「優等生」の内面が、そんなものだとは想像もしていなかったから。それなら俺と一緒じゃないか。

 

話題は変わる。

 

学生時代、プールの監視員のバイトをしていたことがある。炎天下、泳者が安全に帰路につけるようにずっと神経を張り詰めている。それなりの緊張感を持って臨んでいるから、肉体的にも精神的にも、それなりの分だけ疲れる。だから、45分に一度の休憩の時には、休憩室に走る。プールサイドは走ってはいけないから、心理的に走る。休憩室には薬缶に氷を山盛りにしてカルピスを注いだものが置いてあるから。

 

一緒にバイトしていた奴に高田(仮名)という奴がいた。鼻持ちならない奴で、発言の折々に英語を忍び込ませる。「僕はこっちをレコメンド、推薦したいなぁ」って感じだ。そしてこの「僕」は加山雄三の「ぼかぁ」って感じで発音される。

 

俺が休憩室に辿り着いた時には、その高田が既に薬缶を手にしていた。薬缶は汗をかき、氷が中で風鈴のような音をたてて揺れている。俺は奴に「ちょうだいちょうだいちょうだい」とフザケて言った。すると仕方無いなって顔で苦笑しながら、奴は手に持ったカップを俺に手渡して、自分には別のカップに改めて注ぎ始めたんだ。

 

俺の常識では、既に注いだカップは自分のものとして確保した上で、仕方無いなだったら、別のカップに注いでやる。そしてそれを渡す。自分の生まれ育ちがそういう貧しいものであったということに気付かされた。

 

別な時にその高田が、俺と並んで話しながら、ひょいとゴミを拾い上げたことがある。自分が捨てたゴミじゃなくても拾えなんて言うのは、先生だけだと思っていたから、これもビックリした。高田は言うんじゃない、黙って拾うんだ。その癖、あんなに嫌味な奴だ。

 

その頃、漸く「良いもん」と「悪いもん」という二項対立から自由になったのかも知れない。