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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

Tattoo you.

雑感 マルタ

マルタでロシア人の子どもに(子どもと言っても高校生だけど)くるぶしのタトゥーを見せられたことがある。漢字だった。漢字だったが、全然意味の分からない、三文字が羅列してあるだけの漢字だ。

 

「俺の名前を掘らせたんだ。そうなんだろ?」

 

彼はそう尋ねてきた。ああ、そういうことか。以前、「ヨーロッパに行くと、漢字を教えてあげると喜ばれるよ」と言われたのを思い出した。イギリスでも「アレキサンドラ」を「漢字に直してよ」って頼まれたことがある。「安歴三度等」とか暴走族風にでっちあげて教えた。どっちにしろ分かりはしないんだ。

 

そのロシアの彼が、どんな名前をどんな漢字で掘ってあったのか、今となっては覚えていない。いないがそれは、俺の「安歴三度等」よりもよっぽど無責任なヤツが作り上げたもののように思えた。それはないだろうって感じだった。しかも尾籠な、あまり良い意味じゃない漢字もあったように覚えている。

 

「…あぁ、そうだね」

 

俺は答えた。何故ならば、タトゥーだ。容易に消せるものではないことは分かっている。

 

寮に帰って、同室のアメリカ人にその旨を告げると「優しいな、お前。俺だったらそれはちょっと変だぜって言ってる。だって、知らなかったらどうしようもないけれど、知っていれば何かしらの対処ができるからな」と言われた。

「対処?」

「修正する。他の図案に紛れさせる。などなど。結構色々出来るんだぜ」

 

なるほど。

 

俺はいつもそうだ。曖昧さを優しさと綯交ぜにして、無自覚に悪い方の札を取る。

 

ひょっとしたら彼は別のアジア人に指摘され「でも以前に日本人がこれで良いって言ってたぜ」って憤慨しているかも知れない。

 

今となっては、あれは現代中国音で読ませるつもりだったんだろうという説、そして悪い字を使って「魔」を払うというつもりだったんだろうという性善説的な発想からなされたものだという形で、自分のずるさを合理化しようとしている。

 

地獄への道は善意で舗装されている」って言ったのは誰だっけ?

 

それはそうと、俺は定年後はピアスを開け、金髪に染め、タトゥーを入れると公言している。なんとなくそれがロックだと思う。というか、そういうことで若い連中がそうすることを抑えつけようとしているのかも知れない。そうしたい俺だって定年までは待とうって思ってるんだぜ、君なんかがするのは生意気じゃないか?って。でも、実際問題、タトゥーを入れると温泉とか入りにくくなるのが面倒だ。そう思っていた。

 

いっそ思い切って落書きみたいな刺青をしてみるのはどうだろうか。マジックで書きなぐったみたいな。瞼に目を描いて眠ってるのに目を開いているように見える、あれをタトゥーでやってしまう。

 

…霊感が生まれるか、全てを失うかどちらかに間違いはない。

 

昔、膝にニコちゃんマークみたいなのを描いて「これ、何だと思う?…膝小僧」ってふざけているヤツが居たけど、そんなタトゥーもしてはいけない。

 

 

 

刺青の男 (ハヤカワ文庫 NV 111)

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