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ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

Got My Mojo Working

音楽 英語

マディ・ウォータースと言えば、ブルースの演奏や録音にエレキ・ギターを使ったその最初期の人物として知られている。ちょび髭を生やし、漫画家のみうらじゅんに言わせると「人生幸朗師匠」のように肩を怒らせて、体を左右に揺すりながら「責任者出てこい!」ではなく「Oh, yeah」とブルースを歌う。

 

彼に「Got my mojo working」という曲がある。

 

♫ I got my mojo working but it just don't work on you.

    I got my mojor working but it just don't work on you.

       I'm gonna love you so bad till I don't know what to do. ♪

 

最初俺は「mojo walking」だと思っていた。だから「どうだい、俺のこの『モージョー歩き』、カッコ良いだろ?」みたいな歌だって思い込んでしまった。

 

でもちょっとタイトルクレジットを見れば、「working」であって「walking」じゃないことは分かる。そこで俺の考えはストップしてしまった。「モージョー歩き」じゃなくて、「モージョー仕事」?

 

俺の頭の中は「?」の前で立ち止まったまま。そのまま何年も経った。

 

池袋に下宿していた頃、近所に小さなジャズバーがあった。一人暮らしの無聊をかこつうちに、ウインドウのクリフォード・ブラウンのポスターに惹かれて入ってみた。気が付いたら常連と呼ばれる客のひとりになるのだが、ある時、カウンターで隣り合ったアメリカ人とブルースの話になって、この曲の意味を尋ねた。

 

「モージョーはまじないね」(ふんふん)

「モージョーワーキング…まじないが効いてるの」(そうかモージョー仕事じゃないんだな)

「モージョーが効いてるけど、お前にだけは、好きな女だけは振り向いてくれないの。そんな歌」

 

あぁ、そういうことか。

 

そのすぐ直後ぐらいだったと思うけど、泉昌之のマンガにこの曲が取り上げられて、偶然それを読んだ。「理解」でも「発見」でも、何かが分かる時は一気呵成に輪郭が組み立てられる瞬間がある。これもそんな瞬間。

 

雑誌に載っていたのかな。サラリーマンのオッサンが、例えば上司と部下との要求の板挟み、娘の反抗、自分の老後への不安、親の介護などなど(具体的には忘れてしまったが)そんなクライシスのさなかにある中間管理職のオッサンが、紆余曲折を経て、ピアノの前に座ってブチギレたようにこの曲を歌うってシーンを読んで完璧に理解した。

 

何をやっても上手く行く。それは俺のモージョーが効いてるからだ。だけどなんでお前には、お前にだけはこのモージョーが効かないんだ。

 

誰にでもある、ひとつだけいちばん叶えたいこと。そしてそいつがどうしても叶わない。だからこそなんとかして手に入れたい。そんな蜃気楼を追いかけるような日常の裂け目に、ひょっこり顔を出すのがこの「Got My Mojo Working」吐息のようだったり、叫びのようだったり。

 

 久しぶりに聞いてみようか。