ジグ・ノート

備忘録のような形でつらつらと…

路地裏の少年

久しぶりに実家に帰り、近所をうろうろした。

 

よく言われてることだけど、子どもの頃、あんなに広かったように思えた「道」が、驚くほどの狭さだったことに気づく。これっぱかりの幅の中で俺たちはキャッチボールをし、缶蹴りをし、爆竹を投げ、大人に怒られて逃げるために必死で駆けたのだ。

 

郷愁からの路地への憧れはSweetなものだ。中上健次が言うところの、歴史的個人的なルサンチマンを負った「路地」じゃあない。それこそ懐かしさだけにオブラートをかけられた狭い路地裏だ。

 

この角を曲がったところにあった肉屋さんで、俺たちは缶蹴りの合間に揚げたてのコロッケを食べた。頼むとサービスでソースをかけてくれたのさ。鬼はそこまで侵出することができないから、食えないんだよ。

それでも逃げおおせた喜びと、再び攻め入る前の準備でワクワクしながら食う熱々のコロッケは、木枯らしが吹きすさぶような冬も、暮れなずむ夏の夕暮れも、ほっこりと温めてくれた。

 

俺がこの道幅の広さを失ったとするなら、代わりにどんな地平を手に入れたんだろう。まだ失っただけで、代わりの地平を手に入れてないんだとしたら、どこへ行って手に入れよう。

 

取り敢えず、あんな秘密のコロッケが食べたいんだ。

 

 

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